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LIVE REPORT from AFI
~現役学生による米国フィルム・スクールレポート~

©2010 American Film Institute. All rights reserved. ©2010 VIPO. All rights reserved.



「フィルム・スクールとは:
ハリウッド業界で果たすその役割」





ビジネス・スクールやロー・スクールという言葉一般的にも知られてきているのに比べ、「フィルム スクール」は日本ではまだまだ知名度が低い。

一方、ハリウッドではフィルム・スクールの業界における存在感は大きい。ジョージ=ルーカス、ロバート=ゼメキス(USC)、デビッド=リンチ、テレンス=マリック(AFI)、フランシス=フォード=コッポラ(UCLA)、マーティン=スコセッシ、スパイク=リー(NYU)など、多くの著名監督がフィルム・スクールを卒業している。

また、プロデューサー、脚本家、美術監督、撮影監督といった映画製作スタッフもフィルム・スクール出身者が非常に多い。
にも関わらず日本において知名度が低い理由としては、圧倒的にアメリカのフィルム・スクールに留学している日本人が少ないことに加え、日本にフィルム・スクールというものが存在していないことに原因があるだろう。

今回は、そもそも「フィルム・スクールとは何なのか」ということを説明してみたい。



大学院レベルの高等映画教育


一般的にフィルム・スクールというと、大学院レベルを指すことが多い。学部レベルでもアメリカの大学には殆どと言ってよいほど映画学部が存在し、600校以上あると言われている。ただし、学部レベルでは映画の歴史や批評を中心としたFilm Studies(映画学)やあくまで練習目的の映画製作が中心である。

AFIに入学する8割程度は、上記のような映画学部で勉強をし、3−5年程度実際の映画製作の現場を経験した後に入学してきた学生たちである。
彼らが仕事を中断してフィルム・スクールに来る理由は、ビジネス・スクールとほぼ同じ。つまり「キャリアアップ」である。

社員プロデューサーやディレクターが大半を占める日本の異なり、アメリカの映画・TV業界のクリエーターはほぼ“フリーランス”により構成されている。そのため、日本のようにOJTを含む社内教育システムが存在しない。

そこで最初は無報酬のインターン等から業界に何とか入り込み、雑用からスタートし3−5年を経て次のステップに進みたいと思った彼らが取る選択肢、それがフィルム・スクールだと言える。



フィルム・スクールへの業界サポート


社内教育システムが存在しないからこそ、上位校と言われるフィルム・スクールは次代の人材育成拠点として、ハリウッドから多くのサポートを受けている。

AFIはソニーやワーナー・ブラザーズからの多額の寄付により成り立っており、学内の建物はWarner Building、Sony Digital Art Center、HBO Pavilionなどの企業名が冠されている。ちなみに、AFIの理事長はソニー会長のハワード=ストリンガー氏である。

また、USCのフィルム・スクールはジョージ=ルーカスをはじめとする卒業生から約200億円の寄付を受け、デジタル時代の新キャンパスを建設した。

サポートは財政面だけではなく、人材面でもフィルム スクールにはハリウッドの重鎮や現役で活躍する業界人たちがこぞって集結している。AFIではアカデミー協会会長を長年務め、自らもアカデミー賞受賞1回ノミネート2回という88歳のフランク=ピアソンが毎週授業を持っている。

88歳にも驚くが、ヒッチコック作品を手がけアカデミー名誉賞を受賞している100歳の美術監督、ロバート=ボイルも未だにAFIで毎週授業を行っている。業界全体で、フィルム スクールという場を使って人材を育てていこうとのコンセンサスが取れているようだ。



フィルム・スクールに入る3つのメリット


先程フィルム・スクールに入る目的として「キャリアアップ」という漠然とした言葉を使ったが、具体的に3つの利点に大別してみたい。

1. 知識の体系化


AFIに入る学生は3−5年の実務経験のなかで何らかの専門分野を身につけている者が多い。例えばプロデュース学科でいえば、元タレント・エージェント、元マーケッター、元プロデューサーアシスタント、元脚本家アシスタントなどがいる。

彼らは自分の専門に関しては深い知識を持っているが、映画をプロデュースする上で必要な知識全体を獲得することを目的にフィルム・スクールに入学している。そして実際にストーリーの企画開発方法から、 予算・スケジュールの組み方、そしてマーケティングやエンタテインメント法といったビジネス知識まで、まさに映画製作のスタートからゴールまでを学ぶ。

一方、撮影監督学科を例にすれば、実務のなかで多くの学生は「カメラ」か「照明」を専門に経験を積んできている。AFIで彼らはその両方をバランス良く学ぶことで、カメラマンと照明技師の上に立つ「撮影監督」へとキャリアアップすることを目指す。

2年間という限られた期間のなかで、効率良く、体系的な知識を吸収することができるのはフィルム・スクールの一つのメリットである。

2. ポートフォリオ(作品集)作り

先ほど、学部レベルで作る作品は練習程度と述べたが、大学院レベルで作る作品は例年アカデミー賞短編部門にノミネートされるほどレベルが高い。他にも学生アカデミー賞、学生エミー賞など評価の場がたくさんある。

特に監督、撮影監督、美術監督、エディター等の志望者にとっては大学院で作る作品が彼らのその後のキャリアを大きく左右する。作った作品を 映画祭に出品してエージェントやプロデューサーの目に触れることで、次の短編作品や初長編作品への道が開ける。

脚本家も卒業するまでに数本の長編作品を書き上げ、脚本コンテスト等に応募することでキャリアがスタートする。

「デジタル時代にはお金をかけず、一人でも映画を作ることが可能」という意見もあるが、それでもなおフィルム・スクールで作品作りする利点はいくつもある。

一つには物理的なサポート。学校が持つカメラや照明機材、サウンドステージ(防音の撮影スタジオ)、編集スタジオなどを無料で使うことができるほか、ハリウッドの多くの業者が「フィルム・スクール割引」を持っている。

加えて、コダックやフジフィルムによる35ミリフィルムの無料提供や、フィルムの現像等のポストプロダクションを全て無料でやってくれる制度もある。

もう一つは人的なサポート。アイデア勝負のホラー映画は別にして、しっかりとしたドラマを作るためには能力のある専門スタッフが必要である。例えば照明やカメラを取ってみても、AFIの撮影では常に撮影監督学科の学生が6−7名集まり、お互いの撮影を助け合う。

一旦学校を出てしまえば、スタッフを一人雇うのにも日給数百ドルで雇わなくてはならないわけで、学生は無償サポートが得られる2年間のうちに結果を出すため必死なのも納得できる。

3. 学歴


また、一見実力社会に見えるハリウッドだが、意外にも学歴が重要視される。

例えば、学生たちはUSC、UCLAといった著名フィルム・スクールか、ハーバード、イェールといったアイビーリーグの学生が大半を占めていた。

ハリウッドで職を得るためには、まずは無報酬のインターン生として会社にもぐり込むのが一つの方法だが、その段階ですでに学歴でフィルタリングが行われる。

「学歴」というと聞こえが悪いが、フィルム・スクール側は業界に最低限の能力のある学生を送り込むことを担保し、業界はそれを期待する意味で学歴を見ていると言ってよい。

例えばスタジオの企画開発職のインターン生には「カバレッジ」という仕事が与えられる。これはエージェントやプロデューサーからスタジオに売り込まれる脚本をまずインターン生が読み、評価と要約を行い上司に提出する作業である。

AFIプロデューシング・プログラムの1年目ではこの「カバレッジ」を練習する授業があり、業界標準のフォーマットを学ぶ。1年目が終わった夏に多くの学生はインターンシップを経験するが、そこで「カバレッジって何ですか?」という事態に陥らないための準備である。

また、AFIでは1年目が終了した時点で各学科の下から1−2割の学生が退学処分となる。これはAFIが業界に対して、卒業生のレベルを担保するための手段とも言える。

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