HOME   »   ★TIPS  »  Japanese Goes To Hollywood -2- 竹内ゆたか
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俳優 竹内ゆたか

滞米暦8年少し。岐阜県生まれ。父親の影響で野球を始め、プロを志すがケガで断念。
たまたまテレビで見たウィル・スミスの言葉に触発され、00年5月、渡米。03年『ラストサムライ』で俳優デビュー。
『硫黄島からの手紙』『グレイズ・アナトミー』(ともに06年)等に出演のかたわら、ハリウッドで出会ったオーストラリア人やブラジル人の仲間とともに製作した、落語『粗忽長屋』が題材のショートフィルム『Mu』(07)の原案・主演をした。
現在は、アメリカのアミューズメントパーク、シックス・フラッグスのTVコマーシャルにも出演、そのウェブサイトでは竹内の顔を超ドアップで見ることもできる。





幼いころから野球が大好きだった竹内少年は、近所でも有名な存在だった。やがてプロを目指すようになるが、それをあきらめなければならないとわかったとき、何をするともなく日々を過ごすようになった。
そんなとき、テレビで見たとある授賞式で「映画のセットで楽しい思いをして、こんな賞までもらえて最高!」と語るウィル・スミスを見た。当時、“楽しいことばかり”追っていた竹内にとって、スミスは究極のあこがれに思えたに違いない。
しかし、ハリウッドにやって来たものの、踏み入れた道は、イバラよりも厳しく、「知ってたら来なかった」。演技する自分と、元の自分との区別がつかなくなり、自分を失ったこともあった。
俳優という職業独特の“厳しさ”を身を持って体験したのだ。


何も知らずに飛び込んだハリウッド


のちに厳しい体験を経験する竹内だが、ハリウッド俳優としてのスタートは上々だった。

「アクティングのクラスを受け始めて、1カ月くらいで、初めての仕事をしました。それが『ラストサムライ』だったんです。 演技の“え”も学んでないんですよ。現場でもいっぱいいっぱいで、何をしていいかわからない。その状態でキャストされました」。

竹内は、剣の達人役の真田広之に向かって『サムライの時代は終わった』と侮辱、首を斬られてしまう役だった。1カ月前までは「一映画ファン」だった竹内が、エドワード・ズウィック監督、プロデューサーのスティーブン・スピルバーグ、主演のトム・クルーズが見守る中、演じなければならなかったのだ。

「ヤバイ」…竹内は、とても正直な人らしい。 たとえるなら、竹内は、その頃、まだ“赤ちゃん”俳優。この映画の後、深く考えるようになったのは「映画は世界中にエクスポーズ(公開)されるということ。それなりに俳優経験のある方なら、そんなこと当たり前のことですけど。僕はそれまで、地元の小さな田舎で、焼鳥屋の息子として生まれた(普通の)男の子だった。それが『もっと、ちゃんとしなきゃ』と考え始めました」。

順調にスタートしたキャリアだが、大きな落とし穴が待っていた。初めて経験することばかりの演技の世界、“赤ちゃん”には刺激が強すぎたのだろうか?

「知らないうちに24時間使っていましたよね。だから僕は“危険な人”でした。現実じゃないキャクターの人生・世界があるわけじゃないですか。(それと)僕自身の生活がある。その境目をぎりぎりまでプッシュして…。どこが境界線かわからないときがありましたよね。人を殺す役じゃなかったんで、もちろん大丈夫でしたけれど」。

こう話す竹内の目は笑っていない。演技にはまっていたということか? と聞いてみるが、それも違うという。はまっていることすらわからない状態だったのだ。

「(俳優は)みんな一回は経験すると思っています。だから誰しもが通った道なんだと思って。でも危ないですよね」。


演技に追い込まれて見つけたものは


今年初め、ハリウッドで活躍中の若手俳優が亡くなった。俳優たちの間には、役にはまりすぎたのでは、というウワサが流れているという。

「ジャック・ニコルソンが昔、彼と同じジョーカーを演じて、同じ睡眠薬を飲んでいたらしいですよ。だから、気をつけろよと注意していたらしんです。ジョーカーというキャラクターがどれだけすごいのか、僕、わからないですけど…。ジャック・ニコルソンは毎晩2時間くらいしか眠れなかったみたいですね」。

一時は引きこもりのような状態にもなった。

「自分でエッジまで行って、どうしようもなくなったときに、自己啓発セミナーとか、宗教的なものとか、結構顔出したんですよ。でもどこまで行ってもやっぱり入りきれなかったんですよね。自分の中で『これは違う』と。もうまともに話もできなかったんです。通じ合ってない、話しても。それで最終的に行き着いたのが、今行っているアクティングのクラスです」。

いつも自分を導いてくれるコーチがいてくればと思っていた竹内、誰かいいコーチを紹介してくれと周りに声をかけていた。

「『プリズン・ブレイク』のピーター・ストーメアに紹介していただいたんです。『PB』で主役の坊主の子(ウェントワース・ミラー)、彼も同じクラスを取っていました。今はね、ちょうど僕が行ったときに、クリスティーナ・アップルゲートも取っていて…。今度『ドラゴンボールZ』の悟空を演じるジャスティン(・チャットウィン)というカナダ人、彼も同じクラスだったんですよ。その人たちも取り続けていることがすごいですよね。だってクラスって、そこまで行ってたら『別に…』というのがありそうですけど。僕らみたいなアクターからしたら、そういう人たちがいたから、一緒にやったりすれば(気持ちも)上げてもらえるわけじゃないですか」。

今では、現実の生活で、ちゃんと地に足をつけておこうと思うようになった。「救われた」と今も通うそのクラスのコーチ夫妻には感謝する。

「とんでもなく混乱していたときに、上手に導いてくれた。引っ張ってくれたんじゃなくて、ガンバレ、ガンバレと押してくれた。そんな感じのコーチ」。


『グレイズ・アナトミー』に出演、そしてこれからの夢は


軌道修正された竹内は、『硫黄島からの手紙』に出演したのち、『グレイズ・アナトミー』にゲスト出演。 「『グレイズ・アナトミー』にキャストされるまでそのドラマは見たことなかったですよ(笑)。

オーディションを受けたときは、ホットドック・コンペティターの役でオーディションを受けたんですけど、コールバックで『もう1回午後に戻ってきて』と。そのときはコーチの役。オレは嘘つき(の役)」。

手術が必要となったホットドック早食い競争の人気選手を、無理に大会に出場させようとするコーチの役。確かに“イヤな奴”の役だった。

「インプロ(即興)で、セリフと違うことを言っちゃったりして、キャストのスターの人、1人結構怒ってましたよ。3回勝手に自分で付け加えて、間違えちゃって。『ハアッ~』って言われました」。

竹内のシーンでは、ナチ、イジー、アレックスの3人が共演。果たして怒ったのは??? ここは竹内、口が固かった。

ナチ役のチャンドラ・ウィルソンについて印象が深かったという竹内。忘れられない共演者はもうひとりいる。アレキサンドラ・ホールデン。『フレンズ』『アリーmyラブ』にも数回に渡りゲスト出演している、主にテレビを中心に活躍する女優。

「一緒にやった作品で、僕は彼女の日本人の彼氏役っていう映画があって、それが『All the days before tomorrow』。そのときに彼女がすごかったんです。彼女の部屋に飾っている写真を撮るために、海に近いところに行って、キスをしたんです。本当に(彼女が)自分に恋に落ちていると思いましたからね。本当にそう思わされたって、初心者が言うことだと思うんですけど(笑)。でも今はそれがわかります、演技だったと。最近はクラスなんかでそういう経験をしてるんで。たとえば(演技中に)相手が『私、この人のことが好きだ』と僕のことを思ってくれてる、そういうことあります」。

人並み外れて感性が豊かなんだ、今さらながらそう感じる。その敏感さは、常に何かに陥りやすい危険性もあるだろう、しかしそれが、俳優・竹内ゆたかの魅力となっている。

最後にこれからの夢を聞いてみた。

「『I wanna be a better lover.』ですね(照れ笑い)。以前、毎日の生活でベター・アクターになりたいと言ったんです、それがいずれベター・ヒューマンになるための道だと。それ(ベター・ヒューマン)がどういう人かなと考えて、ふと、ベター・ラバーかなと思ったんです。大きな意味で、たとえば親が子への愛もそうですけど、同じステージ上で命がけでアクティングしてくる人に対してもそうです。人生かけてる人もいっぱいいますから。愛を受け止めて返せる、愛の大きなエネルギーのエクスチェンジができるようになりたい。もっともっといろんなアクターと。あんまりすごい人とやってしまうと、僕は殺されてしまいそうですけど。僕は待っているの性に合わないんで、自分で書いたりとか、プロデュースを手伝ったり、そういったビハインド・ザ・カメラみたいなこともやります。僕は欲深いんですね、いっぱいありますよ。本当にいっぱいありますんで、絶対生まれ変われますよ、僕。今の人生で全部消化できると思えないですもん」。


取材・文/橋本裕美子
構成/海外ドラマNAVI編集部
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